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東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)78号

原告

関西汽船株式会社

右代表者代表取締役

沖守弘

右訴訟代理人弁護士

門間進

角源三

被告

中央労働委員会

右代表者会長

石川吉右衞門

右指定代理人

渡部吉隆

高田正昭

佐藤久信

青田三郎

被告補助参加人

全日本港湾労働組合 関西地方阪神支部

右代表者執行委員長

藤本弘和

右訴訟代理人弁護士

河村武信

海川道郎

正木みどり

斉藤真行

伊賀興一

坂田宗彦

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が中労委昭和五七年(不再)第四九号事件について昭和五九年五月九日付けでした命令を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  補助参加人組合は、昭和五七年一月二七日大阪府地方労働委員会に対し、原告を被申立人として不当労働行為救済の申立てをし(同委員会昭和五七年(不)第三号)、同委員会は、同年八月一三日付けで、別紙(一)(略)のとおり右申立てを一部認容する救済命令(以下「初審命令」という。)を発した。

原告は、初審命令を不服として同月二五日被告に再審査申立てをしたが(中労委昭和五七年(不再)第四九号)、被告は、昭和五九年五月九日付けで、別紙(二)のとおり、再審査申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発し、右命令は同年六月一日原告に交付された。

2  しかし、本件命令には、次のとおりの違法が存在する。

(一) 補助参加人組合は、全日本港湾労働組合(以下「全港湾」という。)に属し、その中央本部及び関西地方本部(以下「関西地本」という。)の下部組織として、その指導を受けて行動しているものであるが、本件の根本的問題は、補助参加人組合が、原告会社の従業員である六藤ら約四〇名(以下「六藤ら」という。)が全港湾の組合員であり、全港湾の一支部である補助参加人組合の構成員であると主張して、原告会社に団体交渉を要求していることにある。

すなわち、補助参加人組合の組合規約三七条は、「加入の確認は、執行委員会及び地方執行委員会で行なう。」と規定しているところ、六藤らの補助参加人組合への加入については、関西地本の執行委員会の確認がされていないのであるから、補助参加人組合が六藤らを自己の組合員である旨主張することは、自己の組合規約に明らかに違反することになる。また、右組合規約三条は、「この支部は、地方本部の代行機関として、地方本部の指導を受けて行動すると共に、下部組織を統轄し指導する。」と規定されており、補助参加人組合は関西地本の指示、指導に反することはできないところ、関西地本は六藤らの加入を認めていないのであるから、この点においても、補助参加人組合の右主張は自己の組合規約に違反している。なお、全港湾中央本部も、六藤らの全港湾への加入を認めていない。

(二) 原告会社の従業員で組織する労働組合としては、本件命令が認定しているとおり、従前から関西汽船労働組合(以下「別組合」という。)が存在しているのであるが、六藤らは別組合から脱退して補助参加人組合に加入したと称している。しかし、別組合はもちろん、その上部団体である全日本海運労働組合連合会(以下「全海連」という。)や、原告会社及びその関連会社の従業員により組織された労働組合で組織する関汽共闘会議は、六藤らの別組合からの脱退を承認せず、ともに日本労働組合総評議会(以下「総評」という。)に属する全海連と全港湾との間で組織の分裂や組合員の切り取りを行うことは許されないとして、六藤らの全港湾加入は認められない旨原告会社に申し出るとともに、大阪府地方労働委員会にも同旨の要請を行っているのである。

また、総評の真柄栄吉事務局長、佐野明組織局長及び黒川武中央労働委員会委員は、昭和五八年九月一二日、全海連及び全港湾に対し、六藤らの脱退に関する全海連と全港湾の組織問題に関する解決案を示し、全海連及び別組合はこれを受け入れたが、補助参加人組合はこれを拒否した。

(三) 不当労働行為制度は、使用者の反組合的意図(不当労働行為意思)の下に行われる諸々の団結権侵害の諸行為を排除して原状を回復させる制度であるから、不当労働行為の成否を判断するに当たっては、当該行為をとりまく背景や事情等の具体的事実を明らかにし、それらに対する総合的判断を行わなければならない。

右観点に立って本件をみると、前記(一)、(二)のとおり、関係の労働組合の諸機関がこぞって補助参加人組合の行動を非難し抑制しようとしていることのほか、原告会社が別組合との間でいわゆる唯一交渉団体約款を締結していること、及び補助参加人組合の本件団体交渉の要求は、六藤らの脱退を別組合に承認させることをねらったものであって、真実な団体交渉の開催を意図したものではないことなどの諸事情があり、これらを総合判断すると、仮に補助参加人組合が原告会社に対して団体交渉を要求し得る地位にあったとしても、労働組合組織間の対立抗争がもはや労働組合の内部問題にとどまらない状況に至っていたから、原告会社としては、中立的立場に立って事態を静観するため、本件団体交渉を拒否せざるを得なかったのであり、団体交渉拒否には正当な理由があり、原告会社には不当労働行為意思が存在しなかったというべきである。

(四) したがって、原告会社が本件団体交渉を拒否したことは不当労働行為とならず、本件命令は労働組合法七条の適用を誤っている。

3  なお、本件命令がその理由の「第一当委員会の認定した事実」で一部訂正したうえ引用している初審命令の理由の「第一 認定した事実」記載の各事実に対する認否は、以下のとおりである。

(一) 第1項「当事者等」のうち、(1)及び(3)の事実は認め、(2)の事実は不知。

(二) 第2項「六藤らの組合加入について」のうち、(1)の事実及び(2)のうち「しかし実際上の運用は、各地方支部の執行委員会で加入が確認されれば、加入申込者を当該支部の組合員として取り扱っている。」との部分は不知、その余の事実は認める。

なお、(3)の末尾の「関西地本加入は確認されなかった。」との部分は、「関西地本及び全港湾への加入は確認されなかった。」と改められるべきである。

(三) 第3項「団体交渉をめぐる紛議について」のうち、(1)の冒頭「五七年一月二一日、六藤らは、前記2(1)のとおり組合に加入し、」との部分は不知、(1)の末尾「要求書を提出するとともに」との部分は否認(要求書ではなく申入書である。)し、その余の事実は認める。

4  よって、原告は、本件命令の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因第1項の事実は認め、同第2項は争う。

本件命令は、労働組合法二五条及び二七条並びに労働委員会規則五五条の規定に基づいて発せられた適法な行政処分であり、処分理由は本件命令書「理由」欄記載のとおりであって、その事実認定及び判断に誤りはなく、原告の主張は理由がない。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因第1項の事実は、当事者間に争いがない。

二  本件命令がその理由の「第一 当委員会の認定した事実」で一部訂正したうえ引用している初審命令の理由の「第一 認定した事実」記載の各事実について検討する。

1  第1項「当事者等」のうち、(1)及び(3)の各事実については当事者間に争いがなく、(証拠略)を総合すると、同項(2)の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

2  第2項「六藤らの組合加入について」については、(2)のうち「しかし実際上の運用は、各地方支部の執行委員会で加入が確認されれば、加入申込者を当該支部の組合員として取り扱っている。」との部分を除くその余の事実及び(3)の事実は当事者間に争いがない。そして、(証拠略)を総合すると、同項(1)の事実が認められ、また、(証拠略)を総合すると、補助参加人組合への加入については、その規約上は、「この組合に加入しようとする者は、所定の加入申込書に、加入金一〇〇円と組合費一ケ月分を添えて申し込めばよい。加入の確認は、執行委員会及び地方執行委員会で行なう。」旨定められており、ここにいう「地方執行委員会」とは関西地本の執行委員会をいうが、従前から補助参加人組合では、その執行委員会で加入を確認したときには、関西地本の執行委員会の確認を得る以前においても、当該加入申込者を自己の組合員として取り扱っていることが認められ、右各認定に反する証拠はない。

3  第3項「団体交渉をめぐる紛議について」のうち、(2)ないし(7)の各事実については当事者間に争いがなく、同項(1)の事実のうち、六藤らが昭和五七年一月二一日に補助参加人組合に加入を申し込み、補助参加人組合は執行委員会でこの加入を確認した事実については前項で認定したとおりであり、その余の事実については、原告会社に提出された文書の表題の点を除き、当事者間に争いがなく、(証拠略)によると、右文書の表題は「申入書」であることが認められる。

三  そこで、まず、六藤らが補助参加人組合に加入を申し込み、補助参加人組合は執行委員会でこの加入を確認したことにより、六藤らの補助参加人組合への加入の効力が認められるか否かについて検討する。

補助参加人組合の規約においては、加入について「この組合に加入しようとする者は、所定の加入申込書に、加入金一〇〇円と組合費一ケ月分を添えて申し込めばよい。加入の確認は、執行委員会及び地方執行委員会で行なう。」と規定されていることは、前記認定のとおりである。右規定の文言上は、地本の執行委員会の行う加入の確認は補助参加人組合への加入の要件であるかのように見えないわけではない。

しかし、(証拠略)によると、補助参加人組合は、全港湾の一地方組織であって関西地本の指導を受けて行動するものであるとともに、補助参加人組合として独自の規約及び執行機関をもち、団体交渉権及び労働協約締結権を有する独立した労働組合でもあることが認められ、右認定に反する証拠はない。そして、このような独立の労働組合である補助参加人組合は、その組合員の加入を認めるか否かについて独自の決定権を有すると解するのが相当であり、このことと、前記認定のとおり、補助参加人組合は、従前から、その執行委員会で加入を確認した者については、関西地本の執行委員会の確認を得なくても自己の組合員として取り扱ってきたことを考え合わせると、前記補助参加人組合の規約は、関西地本への加入の要件としてはともかく、補助参加人組合への加入については、関西地本の執行委員会の確認を必要としていないものと解釈するのが相当である。そして、六藤らについては、前記認定のとおり、関西地本の執行委員会においては未だ加入の確認がなされていないものの、補助参加人組合はその執行委員会で加入を確認しているのであるから、これらの者は補助参加人組合の組合員であるということができる。したがって、補助参加人組合は原告会社に対し団体交渉権を有するところ、前記認定の事実関係に照らすと、本件団体交渉の要求はいずれも適式になされているというべきである。

四  原告は、補助参加人組合の上部団体及び別組合やその上部団体など関連する労働組合において、補助参加人組合がその関西汽船分会員を自己の組合員として取り扱っていることを非難し、抑制しようとしていたこと、原告会社が別組合との間でいわゆる唯一交渉団体約款を締結していること、及び本件団体交渉要求の真の目的は六藤らの脱退を別組合に承認させることにあることなどの諸事情に照らすと、原告会社としては、労働組合間の対立抗争に対して中立的立場をとって事態を静観するほかなく、そのため本件団体交渉を拒否せざるを得なかったのであり、原告会社には不当労働行為意思がなかった旨主張する。

しかし、まず、本件団体交渉要求の真の目的が原告主張のようなものであったことを認めるに足りる証拠はない。また、一般に複数の労働組合の間に対立関係があり、使用者がその一方と団体交渉をすることが他方の反発を招くおそれがある場合、このことを理由として、使用者が一方の組合と団体交渉をすることを拒否することは、そのこと自体により他方の組合を利することとなり、結局使用者が労働組合間の対立抗争に介入する結果を招くことになるから、適式な団体交渉要求がある以上、右のような事情があったとしても、使用者は団体交渉を拒否することはできず、このことは、使用者が他方の組合といわゆる唯一交渉団体約款を締結している場合においても異なることはないと解すべきである。したがって、原告の主張する事情のうち、本件団体交渉要求の目的の点を除くその余の諸事情が仮に存在したとしても、前記のとおり適式な団体交渉の申入れが行われている以上、それらは右申入れを拒否する正当な理由とはなり得ない。そして、右のように正当な理由もなく団体交渉の申入れを拒否することは、不当労働行為意思の存否を問題とするまでもなく、労働組合法七条二号の不当労働行為を構成するものというべきである。よって、原告の前記主張は採用できない。

五  以上によると、原告会社の本件団体交渉拒否は労働組合法七条二号に該当する不当労働行為であるから、本件命令には所論の違法はなく、本件命令は正当である。

よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今井功 裁判官 藤山雅行 裁判官矢崎博一は転勤のため署名押印をすることができない。裁判長裁判官 今井功)

別紙(二) 命令書

再審査申立人 関西汽船株式会社

代表者 代表取締役 沖守弘

再審査被申立人 全日本港湾労働組合関西地方阪神支部

代表者 執行委員長 藤本弘和

主文

本件再審査申立てを棄却する。

理由

第1 当委員会の認定した事実

当委員会の認定した事実は、本件初審命令の理由第1に認定した事実の一部を次のように改める以外は当該認定の事実と同一であるので、これを引用する。〔以下引用・訂正済―編注〕

1 当事者等

(1) 再審査申立人関西汽船株式会社(以下「会社」という)は、肩書地(略)に本社を置いて主として海運業を営む会社であり、その従業員は、本件再審査審問終結時約一、二〇〇名である。

(2) 再審査被申立人全日本港湾労働組合関西地方阪神支部(以下「組合」という)は、主として関西地方の港湾労働者によって組織されている労働組合であり、その組合員は、本件再審査審問終結時約一、二〇〇名である。

なお、会社には組合の一分会として全日本港湾労働組合関西地方阪神支部関西汽船分会(以下「分会」という)があり、その分会員は、本件再審査審問終結時約四〇名である。

(3) 会社には、この外会社の従業員で組織する関西汽船労働組合(以下「別組合」という)があり、その組合員は、本件再審査審問終結時約一八〇名である。

2 六藤らの組合加入について

(1) 五七年一月二一日、会社の従業員である六藤隆夫ら四七名は組合に加入を申し込み、これを受けて、同日、組合は執行委員会を開催し、この加入を確認したため、翌二二日、同人らは分会を結成するとともに、別組合に脱退届を提出した。

(2) ところで、全日本港湾労働組合(以下「全港湾」という)は、個人加入方式による全国的単一組織であるが、これへの加入が認められるためには、組合規約によれば、まず、<1>各地方支部の執行委員会(本件の場合、組合の執行委員会がこれに当たる)及び各地方本部の執行委員会〔本件の場合、全港湾労働組合関西地方本部(以下「関西地本」という)の執行委員会がこれに当たる〕で加入を確認し、次いで<2>全港湾の中央執行委員会でその加入を確認することが必要である。

しかし実際上の運用は、各地方支部の執行委員会で加入が確認されれば、加入申込者を当該支部の組合員として取り扱っている。

(3) 二月八日開催された関西地本の執行委員会で、組合の執行委員長藤本弘和(以下「藤本委員長」という)は、前記六藤隆夫ら四七名(以下、この四七名を「六藤ら」と総称する)の組合加入を報告し、その確認を求めた。しかし、別組合の上部団体である全日本海運労働組合連合会(以下「全海連」という)から全港湾中央本部に「別組合の一部の組合員が脱退と称して分裂活動を行っているが、別組合としてはこの脱退を認めておらず、あくまで組織内の問題として解決するつもりであるから、同人らの全港湾への加入は認めないでいただきたい」旨の要請があり、これを受けて全港湾中央本部は関西地本に「六藤らの組合及び関西地本加入問題については慎重に取り扱うよう」指示していたため、この執行委員会ではこれをめぐって議論が交わされたが、賛否両論相半ばし、結論はでなかった。そこで藤本委員長は「組合としては、既に六藤らの組合加入を組合の執行委員会で承認している。しかし、関西地本以上の上部組織における六藤らの組合加入事実の確認は一時保留してもらってもよい」との旨述べ、結局、同日の執行委員会では六藤らの関西地本加入は確認されなかった。

3 団体交渉をめぐる紛議について

(1) 五七年一月二一日、六藤らは、前記2、(1)のとおり組合に加入し、翌二二日、午前九時ごろ、藤本委員長外九名の組合役員及び分会長六藤隆夫外四名の分会役員(以下「藤本委員長ら」という)は、会社に赴き、代表取締役神野純一(以下「神野社長」という)に対して、<1>分会員の労働条件については、組合との団体交渉によって決定し実施すること<2>分会員に対し不利益な出向、賃金差別等不当労働行為を行わないことを内容とする要求書を提出するとともに、団体交渉の開催を申し入れた。

(2) しかし神野社長は「急なことなので今すぐ回答することはできない」旨答えたので、同日午後三時三〇分ごろ、藤本委員長らは再度会社を訪れ、<1>分会員の組合費のチェック・オフを行うこと<2>組合事務所を貸与すること <3>組合用掲示板を貸与することを要求するとともに、前記(1)に対する回答を求めた。これに対し取締役南條速雄(以下「南條取締役」という)は、藤本委員長らに対し「<1>会社と別組合間には、唯一交渉団体約款が締結されているので、会社が組合と団体交渉を行うためには別組合との調整が必要である <2>前記<1>から<3>の要求については後日回答する」旨回答するとともに組合員名簿の提出を求めたため、藤本委員長らは、「それでは二五日に要求事項についての回答をいただきたい。組合員の名簿はその時に提出する」旨述べ退室した。

(3) 一月二五日午後一時三〇分ころ、藤本委員長らは再び会社を訪れ、前記3、(1)及び(2)の事項につき団体交渉の開催を要求したが、その応対に出た総務部次長石垣美行(以下「石垣次長」という)は「役員及び関係部長が不在のため団体交渉に応ずるわけにはいかない」旨述べ、これを拒否した。これに対し組合は「それは約束違反である」、「南條取締役と連絡をとれ」などと石垣次長に要求したが、石垣次長は「今朝、南條取締役の不在については、梶浦書記長に連絡してある」、「会社回答は文書でお渡しする」との旨述べたため、これをめぐって両者間で言い争いとなった。結局、藤本委員長らは団体交渉の開催を断念し、分会員名簿を石垣次長に手渡し退出した。

なお、その際、石垣次長は「六藤らの組合加入の事実を明らかにされたい」旨の会社の文書を組合に手渡そうとしたが、組合がこれを拒否したため、同日、会社は分会長六藤隆夫あてにこれを郵送した。

(4) ところで、同日午前中、全海連の組織副部長、別組合の副委員長、書記長及び組織部長は、南條取締役及び石垣次長に対し、「<1>別組合内部で脱退と称して分派活動が行われているが、別組合はまだ脱退を認めておらず、現在その組織復帰に全力を挙げている <2>別組合は全海連を通じて全港湾中央本部に六藤らの組合加入を認めないよう要請している <3>会社と別組合間には唯一交渉団体約款が締結されているのであるから、会社の団体交渉の相手は別組合だけである」旨述べ、組合とは団体交渉を行わないよう強く申し入れた。これに対し南條取締役は、「<1>会社と別組合は、三〇数年来のつき合いであり、信義を裏切るようなことはしない <2>今回の問題は基本的には労働組合間の問題であるからその結着がつくまで静観する」旨回答した。

(5) 組合は翌二六日から二九日にかけて会社に対し、再三、前記3、(1)及び(2)の事項につき団体交渉の開催を申し入れたが、その都度石垣次長は、「社長以下役員が不在であり連絡がとれない」旨答え、これを拒否したため団体交渉は開催されなかった。

(6) 二月一日、組合は団体交渉の開催を求めて会社に赴いたところ、七〇名程度の従業員(ほとんど別組合員)が会社玄関にピケを張り組合の会社内立入りを阻止したため、組合は石垣次長に会うことができなかった。

(7) 翌二日、組合は前日と同様、団体交渉の開催を求めて会社に赴いたが、警備員と記載された腕章を付けた会社の従業員が玄関前に立ちふさがり組合の会社内立入りを阻止した。これは会社が連日の組合による団体交渉要請に対して、社内秩序の回復と業務の円滑な遂行のため必要であると判断して業務命令をもって行わせたものであった。

なお、同日以降本件再審査審問終結時に至るまで、会社は組合の団体交渉申入れに応じていない。

第2 当委員会の判断

会社は、組合の昭和五七年一月二二日付け要求について団体交渉に応じないことを不当労働行為であるとした初審判断を不服として再審査を申立て、その応じない理由として、<1>六藤らは、全港湾及び関西地本によって加入を否定されたため、全港湾の組合員となり得ず、したがって組合には会社との団体交渉の当事者たる適格がない、<2>会社は、六藤らの脱退を別組合は承認しておらず、かつ、別組合との間には唯一交渉団体約款があるため、別組合から組合との団体交渉に応じないよう強い要請を受けている。<3>組合の上記団体交渉要求は、六藤らの脱退を別組合に承認させることを狙ったものであって、真実な団体交渉の開催を意図したものでないと主張する。

以下順を追って判断する。

1 前記第1で引用する初審命令第1(以下「前記第1」という。)の1及び2の(1)ないし(3)で認定のとおり全港湾は、個人加入による全国的単一組織であり、組合はその一支部ではあるが、それ自体としては自らの組合規約及び執行機関を有する一つの労働組合であり、また、別組合から一部の脱退者が生じて組合に加入し、組合の承認を取り付けたものである。してみると、組合はこれにより会社の従業員の一部を新規に組合員として受け入れるとともに前記第1の3の(1)ないし(3)認定のとおり、その組合員たる六藤らの労働条件について会社に団体交渉を申し入れたものであってみれば、会社と団体交渉をなしうる地位にあるものといわざるを得ない。

もっとも前記認定によれば、六藤らの全港湾への加入は組合の執行委員会において承認されているが、関西地本の執行委員会において保留され、その取扱い方については全港湾と全海連との間において折衝が行われているのであるから、会社としては六藤らの全港湾加入について疑問を抱くのは無理からぬところである。

しかしながら、このような状況の下において組合が六藤らをその組合員として扱うことが全港湾の規約上適法であるか否かの問題が存するとしても、六藤らが組合に加入している事実そのものは否定しえないのであるから、会社はこのような全港湾の組織上の問題を理由として組合との団体交渉を拒否するのは正当ということができない。

2 会社が従前から別組合との間にいわゆる唯一交渉団体約款を締結していること、会社が組合から団体交渉開催の申入れを受けて同約款の存在を理由に交渉を拒否していることは前記第1の3の(2)及び(4)認定のとおりであるが、会社が別組合との間に唯一交渉団体約款の存在することのみをもって組合の団体交渉の要請を拒否する正当な事由とはなし得ない。

3 組合の団体交渉開催要求は前記第1の3の(1)及び(2)認定のとおり組合員の労働条件その他チェックオフの実施、組合事務所の貸与など具体的事項を対象としているから会社主張のように真実は別組合脱退者の脱退を別組合に承認させることを目的としたものとは判断することはできない。

よって、会社の団体交渉拒否の理由はいずれも正当なものとは認め難く組合との団体交渉を拒否したことを不当労働行為と判断し、会社に団体交渉応諾を命じた初審命令は相当である。

以上のとおり、本件再審査申立ては理由がないので、労働組合法第二五条及び第二七条並びに労働委員会規則第五五条の規定に基づき主文のとおり命令する。

昭和五九年五月九日

中央労働委員会

会長 平田冨太郎

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